みなべ・田辺の梅システム

和歌山県南部に位置する、みなべ・田辺地域は、人口およそ8万人(2010年)の小さな地域ですが、日本一の梅生産地として有名です。
そこには、梅産業から広がる、様々な文化と景観、先人の知恵と工夫でつくられた、世界に誇るべき日本の農業システムがあったのです。

栽培面積約4100ha・国内シェアの24%
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生産量4万4000トン・国内シェアの55%
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江戸時代から400年以上続く伝統的な梅システム知っておくべき4つのヒミツ

養分に乏しい土地、さらに海の近くまで山地が延びるこの地域では農耕のための平地が少ないという状況の中、
400年以上にわたり高品質な梅を持続的に生産してきました。そこには梅システムを取り巻く4つのヒミツがあったのです。

梅の受粉のヒミツ

収穫・加工のヒミツ

山を守るヒミツ

生態系のヒミツ

知らなかった!栽培に不可欠なハチの役目

皆さんは、作物を育てるのに蜂が必要だということを知っていますか?
みなべ・田辺地域で栽培されている梅の多くの品種は、自家受粉できないため、他種の梅を近くに植え、その花粉で受粉させています。ですが何百という木に手作業で行うのは非常に困難。
そこで「ニホンミツバチ」が利用されているのです。
花の少ない早春に満開となる梅は、地域に生息するニホンミツバチにとって貴重な蜜の供給源となります。
この(梅とミツバチとの共生)が世界農業遺産として評価されたのです。

古くから日本の野山に生息するニホンミツバチ

古くから日本の野山に生息するニホンミツバチ

地域一帯型!ブランド梅を作った生産者と加工業者の密接な連携

南高梅は完熟してから収穫されますが、落下してしまう実に傷がついてしまいます。そこで当地域で考案された「斜面にネットを張って集める」という新しい農法により、落下しても傷のつきにくい見た目も美しい梅干しが出来上がります。

さらにこの地域ではほとんどの梅の生産者が、収穫した梅を水洗いし、塩漬けにして(白干し)という一次加工まで行っているので、南高梅は栽培の段階から、良質の梅干しになるように考えながら育てられている。 その後、加工業者が脱塩・調味などの工程を加えて、商品化しています。 この「地域の生産者と加工業者との連携」が(みなべ町の南高梅)というトップブランドを生み出しているのです。

紀州備長炭の原料”ウバメガシの森”の役目

良質な木炭として有名な備長炭。南高梅と並んでこの「紀州備長炭」は全国に誇る有名ブランドです。この備長炭を作る「炭焼き」も今回世界農業遺産に評価されたポイントです。

原料であるウバメガシの木は「和歌山県の県の木」として定められているほど、和歌山の地に多く生息しています。このウバメガシの森(薪炭林)が山を守る救世主なのです。みなべ・田辺地域では昔から「薪炭林を残すために、山全体を梅林にしない」という習慣が守られてきました。

炭焼き職人がウバメガシやカシの木を択伐(細い枝は切らずに残し後継樹を育てながら森林の更新を図る伐採法)することで、急斜面の山の農地を土砂崩れなど、山が荒れるのを防いでいます。

この炭焼き職人による地道な管理・整備があってこそ山は健全な状態に保たれ、持続可能な農林業が維持されているのです。

全てを繋ぐ生態系と梅から生まれたこの地域の文化

海辺と山間が隣接しているこの地域には他にも様々な生態系ができています。梅林・薪炭林には(ハイタカ)や(オオタカ)の生息、(サシバ)や(ハチクマ)など鷹の仲間が多く飛来し、山間のため池や里地の水田には、(カスミサンショウウオ)や(アカハライモリ)など希少種が確認されています。そして、みなべ町内の千里の浜は、本州では珍しい(アカウミガメ)の産卵の密度が最も高い地域です。

(梅とミツバチ)の関係性、(梅林と薪炭林)によって守られている山、この『みなべ・田辺の梅システム』によって土壌の崩落や流出を防ぎ、総合的な自然環境が守られ、この全てを繋ぐ多様な生き物の生態系は維持されているのです。

そしてその生態系の中にいる、私たち人間にも梅がもたらした文化がある。観梅の季節には人々は梅林で宴が開かれ、梅の収穫に感謝する梅の奉納祭や、梅を使った伝統的な食文化。梅は年間を通して様々な場面でみなべ・田辺地域の人々の生活に根付いているのです。

People who support UME SYSTEM

みなべ・田辺の梅システムを支える人たち